2008年3月21日
夜中に煙草のけむりをふうと吹いたとき、窓の外からドスンという音がしました。
どなたか轢かれたかと思い、窓を持ち上げて恐る恐る外を覗きました。
今までに見たこともない大きな雨が道路にうずくまっていました。
丸まってぷるぷると震えています。
「どうしたの?」と私は聞きました。
「なくしてしまったんだよ」と雨は少し怒りがちにいいました。
「なにを?」と私が訊ねると、雨は舌打ちをしてバッシャと爆ると大きな水たまりになってしまいました。
水たまりには雨上がりの月が光っていました。
「なにをなくしたんだろう?」と月に訊ねると、月は大きな口をぱくぱくさせるだけです。
「ずいぶんと閑かな夜ですね」と私が言うと、また月はぱくぱくとするだけです。
しばらくすると淡い煙が漂ってきて、月はどこかに隠れてしまいました。
持っていた煙草が窓枠に当たって、火種がジリジリと音をたてていました。
消えてしまったまん丸の月を思い出すと、無性にホットケーキが食べたくなりました。
ぱくぱくもホットケーキと言っていたような気がしました。
私はキッチンの引き出しから古い蜂蜜を取り出しました。
煙草の火種で火を付けました。
温まってきたフライパンに手をかざして、ホットケーキ、ホットケーキと呟きました。

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