2008年2月 1日
たとえばこの、白と黒がまったく逆だったとするよ。
そんな哀れな目で見ないで、たとえば、これは例えばの話。
滅多にやらないオセロでの、私の勝ちっぷりに気圧されて、彼は私にものを言います。
続けて言わせてもらえば、この間。
これは例え話じゃないけれど、道行くちびっ子2人組がお互いの耳を引き千切るように引っぱり寄り添い、囁き合って歩いていたのよ。
「せっかくこっち側に来てみたのにな」と片方が言うと、
「そうだね、何にも変わらない。写真のネガみたいで面白いのに」とかなんとか相方が言う。
そのうち小走りになって、言葉も千切れていくもんだから気になって、拾い拾い追いかけたのよ。
「おまえ、裏返ってるぜ」
「きみも裏返ってるよ」
「なんだ、みんな裏返ってるからわからなかった」
なんぞ言っているようだったけれど、
「まだ明るいな」
「そうだね、そうだけれど、どうやらあのあれは、穴ぼこのようなあれは、月だね」
息を切らして、そうして二人。
赤信号の横断歩道でビタリと立ち止まったところ、横断歩道の白黒の、あの横断歩道のシマシマの、白いほうの端々をつまんでめくり上げたかと思うと、真夏の涼しいお布団よろしく二人仲良く頭からするりと滑り込んでおったのよ。
つまるところ、そういう話。
そういう話の間、私は盤上に頭をかぶせて彼につむじを見せつけていたのですが、
どうやらこれは無駄無駄無駄と思い果て、仕舞いの一手を指す前に1つ口上を垂れてやりました。
「おったのよ、とはなんなんですか。少しグルーヴが足りないようで。
ところで、私はこの世で一番八朔という食べ物が好きですが、これの剥き方には独特の方法を持っておりまして、まず第一に風呂上がりを大前提にしてタオルを肩にかけますと、八朔は嗚呼もうこれでお仕舞いかと小さくなってしまう恐れがありますので、同系色の黄色のタオルを喉元に垂らします。そうです、マッキッキのあれで誤摩化したあとは、まあ独特の剥き方をするのですが、それはそんなに面白い話でもないので、あなたは聞く耳をもたないでしょうから一つだけ忠告させてもらいますと、八朔の飛沫は非常に強烈ですので眼鏡に爆ぜたときなんかは、あなたにそんな気持ちわからないでしょうけれど。なにせあなたは眼鏡をしていないのだから。あれは、もうこりごりです。ただの飛沫と思ってハンカチーフで拭ってごらんなさいよ。眼鏡も嗚呼もうこれでお仕舞いかと小さくなってしまって、どういうわけか私の視力を大きくするための、あの眼鏡が。そうです。いや、間違えましたあの眼鏡もこの眼鏡もそういった眼鏡でなくなるのですよ。
ですからつまり、そういう話をあなたは私になさったわけです。それでもタオルは決して使いません。ハンカチーフに限るのです」
言いのけてやると、私はご機嫌ななりで手に取った八朔の皮っぺり、凹んだところを親指の先でぶすりと突いてしまったのでした。
それ忘却の見たことか。
かの粒々の分身かしら、独特を忘れたそれはいつになく飛沫を爆ぜさせました。
そうやって飛び散ったただの飛沫はオセロの白いほうに落ち着いてしまったので、
嗚呼もうこれでお仕舞いかと小さくなった白くて丸いやつたちが、私に負けを呼び込んだのです。

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